2022年10月5日の原子力規制委員会において、経済産業省資源エネルギー庁の松山泰浩電力・ガス事業部長は、原子力発電所の運転期間60年の上限見直し、新制度策定、原子力発電所の停止期間の運転期間不算入などについて述べ、委員の質問に対し、新制度において運転期間を延長するかどうかの判断主体は利用側になると答弁しました。
2022年10月15日、当会は、福島第一原発事故の教訓を蔑ろにし、事故以前の原発政策に回帰させようとする経産省に対して抗議文を提出しました。
2022年10月15日
経済産業大臣 西村康稔様
泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
代表 市川守弘
原発政策の福島第一原発事故以前への回帰に怒りをもって抗議します
10月5日の原子力規制委員会において、経済産業省資源エネルギー庁の松山泰浩電力・ガス事業部長は、原子力発電所の運転期間60年の上限見直し、新制度策定、原子力発電所の停止期間の運転期間不算入などについて述べ、委員の質問に対し、新制度において運転期間を延長するかどうかの判断主体は利用側になると答弁しました。私たち「泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会」は、福島第一原発事故の教訓を蔑ろにし、事故以前の原発政策に回帰させようとする経産省に怒りをもって抗議します。
2011年の東京電力福島原発事故の際、第一原発1号炉は運転開始40年を目前にし、運転継続のための審査に合格したばかりであったにもかかわらず過酷事故に至りました。この事故の教訓として、2012年の原子炉等規制法の改定で「原則40年、最長60年」という稼働制限期間が定められました。そのことを経産省は忘れたのでしょうか。原発の運転期間規定を削除すれば、原発の老朽化に伴う安全性の審査ができなくなる、あるいは弱体化する恐れがあります。リスクの高い老朽原発がなし崩し的に動き続ける事態につながりかねず、国民の命と生活、日本の経済を原発の過酷事故というリスクに曝し続けることになります。また、そもそも30年以上前の原子炉の設計には構造的な欠陥があることが専門家から指摘されており、深刻な事故を引き起こす原因となることが危惧されます。
原発が稼働していなかった期間を運転期間に含めないことも、大きな事故を招く原因となります。北海道において泊原発は10年以上もの長期間、停止していますが、運転休止中も原子炉の経年劣化は進んでおり、原発施設内に設置されている配管(細管)、ケーブル、ポンプ、弁、防水施工など各設備・部品などは当然経年劣化します。また、電力会社による点検は、点検範囲が限定されているうえ、10年以上にわたり点検技術が継承されていないために、故障箇所や不具合の原因をつきとめ、交換すべき部品をすべて確認し、改善することはもはや困難と言えます。北海道電力は本年3月の原子力規制委員会において、泊原発施設内の機器の点検不備や故障箇所の発覚が相次いでいることについて「マンパワーが足りず、点検技術継承がされていない」と自ら認め謝罪しています。
福島第一原発事故以前、安全審査は原発推進官庁である経産省の所管でした。原発推進官庁が安全審査をすることが過酷事故の要因であった反省から、原子力規制委員会が作られ、安全審査は原子力規制委員会の所管となりました。今回、運転期間の上限を伸ばすべきとし、その判断主体は利用側、つまり推進側であると堂々と語る姿からは、福島第一原発事故への反省も、被災者に対する痛みも、また真にこの国の経済と産業の健全な育成を考える姿も見いだすことはできません。
私たちは、東京電力福島第一原発事故への反省をかなぐり捨て、現行規定の見直しを本格化して事故以前の原発政策に回帰しようとする経産省に、満腔の怒りをもって抗議します。
以上