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2023/2/26 原発の60年超運転を可能にする原子炉等規制法改正案を正式決定した原子力規制委員会と、この決定を強引な手法により主導した山中委員長に対する抗議文を提出

 原子力規制委員会は2023年2月13日の臨時会合において、明確に反対を述べる委員がいるにもかかわらず、政府の原発推進政策への大転換に歩調を合わせ、原発の運転期間を「原則40年、最長60年」とする原子炉等規制法の改正案について了承の決定を行いました。

 私たちは、この決定を強引な手法により主導した山中委員長に対し、また決定に同調し、あるいは容認した各委員に対し強く抗議します。

 

 2023年2月26日、当会は原子力規制委員会に対し、抗議文「原発の60年超運転を可能にする原子炉等規制法改正案を正式決定した原子力規制委員会と、この決定を強引な手法により主導した山中委員長に対し、強い怒りをもって抗議します」を提出しました。


原発の60年超運転を可能にする原子炉等規制法改正案を正式決定した原子力規制委員会と、この決定を強引な手法により主導した山中委員長に対し、強い怒りをもって抗議します

 

 

2023年2月26日

原子力規制委員会

委員長 山中伸介様

泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
代表 市川守弘

 

 私たちは、原子力規制委員会が2月13日の臨時会合において、明確に反対を述べる委員がいるにもかかわらず、政府の原発推進政策への大転換に歩調を合わせ、原発の運転期間を「原則40年、最長60年」とする原子炉等規制法の改正案について了承の決定を行ったことについて、この決定を強引な手法により主導した山中委員長に対し、また決定に同調し、あるいは容認した各委員に対し強く抗議します。


 山中委員長は常々、令和2年7月29日の文書の「運転期間の定めは利用政策判断であり規制委が意見を述べるべき事柄ではない」との文言を持ち出し「規制委員会の見解」「大切な決定」であると語っていますが、この文書(「運転期間延長認可と長期停止期間中の原発の経年劣化との関係に関する見解」)は、令和2年7月29日の規制委員会に「資料5」として突然提出されたものであり、それに先立つ7月22日の規制委委員会では当時委員であった山中委員長一人が同趣旨の発言をしているにすぎなく、7月29日の規制委員会では山中委員長自らが「私のコメントをまとめていただいた」と発言しています。13日の規制委員会で石渡委員が述べているように、規制委が議論を重ねて作られたものではないことは、7月22日・29日の規制委議事録を読めば誰にでもわかることです。このような文書をもって原子炉等規制法改正の根拠とした山中委員長、ならびにそれに同調・あるいは容認した各委員に抗議します。

 山中委員長はこの間、新たな制度では運転開始から30年以降、最長10年ごとに審査を行い、制度として厳しい方向に行くなどと述べてきましたが、重々ご承知のように、2012年の原子力規制委員会発足と原子炉等規制法改正の前にも、この「運転開始から30年、その後10年後毎」という制度が行われていました。高経年化した原子力発電所に関し、2003 年に実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の改正施行により、事業者が30年を経過する日 までに経年劣化に関する技術的な評価を行い、この技術評価は、初回の評価の後10年ごとに行われ、高経年化技術評価においてプラントの供用期間は60年と仮定されていました。また2009年1月から、高経年化技術評価の結果から長期保守管理方針を策定し、同方針を保安規定に含め、国の認可を受けることが義務付けられていました。しかし東京電力福島第一原発は運転開始40年を目前にし、運転継続のための認可を受けたばかりであったにもかかわらず過酷事故に至りました。言うまでもなく、この事故を教訓として2012年の原子炉等規制法の改正で「原則40年、最長60年」という稼働制限期間が定められたのです。この歴史的経過をなかったこととし、60年超の原子力発電所の安全規制について定めることもなく、原子炉等規制法から稼働制限期間の規定を削除しながら「新たな制度」の方が安全というのはまったくの欺瞞です。

 内閣法制局による炉規法改正の立法趣旨についての文書(2012年7月)には明確に「安全上のリスクを低減する趣旨で運転期間を制限する」と書いてあります。運転期間の制限は、私たち国民を守るために原子炉等規制法に盛り込まれたものです。原発推進官庁である経産省が安全審査をすることが過酷事故の要因となった反省から原子力規制委員会が作られ、安全審査は原子力規制委員会の所管となった経過を考えても、今回、原子炉等規制法から原子力発電所の稼働制限期間を削除し、経産省が所管する電気事業法に規定を盛り込むという福島第一原発以前への原子力政策回帰の一端を山中委員長が積極的に担ったことは、規制委員会への国民の信頼を自ら捨て去るものです。

 私たちは、東京電力福島第一原発事故への反省をかなぐり捨て、原子炉等規制法について、60年超の運転を可能にする改正案を了承したことについて、この決定を強引な手法により主導した山中委員長に対し、また決定に同調し、あるいは容認した各委員に対し強く抗議します。

 

以上