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2023/3/9「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案」への抗議文を提出

 政府は2023年2月10日、最終処分関係閣僚会議を開き、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案を公表しました。

 この改定案が地域社会を分断し地方自治を毀損することから、2023年3月9日、この改定案に抗議し改定案の撤回を求める文書を内閣総理大臣宛に提出しました。


地域社会を分断し、地方自治を毀損する「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案」に抗議し、改定案の撤回を求めます。

 

 

2023年3月9日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様

泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
代表 市川守弘

 

 政府は2023年2月10日、最終処分関係閣僚会議を開き、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案を公表しました。私たちは、この改定案が地域社会を分断し、地方自治を毀損することから、この改定案に抗議し、改定案の撤回を求めます。


 これまでも原子力発電・核燃サイクル・核ゴミの地層処分など核関連の事業が進められるときに、民主的な公論形成、開かれた透明性の高い政策プロセスにより、当該市町村の住民や県・道などの広域自治体の住民が、その必要性や安全性について充分納得した上で受け入れるということは行われてきませんでした。核関連事業が進められる市町村では、首長が隠密裏にことを進めたり、その土地の建設業者などで構成される商工会議所が議会に誘致決議を求めたりする形で電撃的に受け入れが決まるなど、民主的とは言えない手法が頻繁に行われてきました。そのためそれらの建設計画が明るみに出たとき、ほとんどの住民にとっては「寝耳に水」であり、しかも住民に検討の時間を与えず、明るみに出てからごく短期間で事業が開始されてしまうということが多くみられてきました。このような例は日本全国で枚挙にいとまがありませんが、北海道における寿都・神恵内での特定放射性廃棄物最終処分場建設に向けた調査の開始も、まさにそのように行われました。
 また地方自治体の首長などを動かすために巨額のお金が、国からの交付金や事業者からの寄付金などの形で投入されてきました。また事業主体とその関係者による饗応、見学と称しての核関連施設立地地域へのツアーへの招待なども盛んにおこなわれてきました。
 今回の改定案では「国は、政府一丸となって、かつ、政府の責任で、最終処分に向けて取り組んでいく」とあるように、国が前面に立つことが強調されています。また「国は、機構及び発電用原子炉設置者等と連携して、全国の地方公共団体や関係団体等を個別に訪問すること等により、相互理解促進活動を強化する。機構は、地方公共団体及び関係住民の声を従来以上に丁寧に聞くとともに、相互理解を深めるための地域の体制を構築すること等により、全国での相互理解促進活動を強化する。
 国は、概要調査地区等の選定の円滑な実現に向けた機構による調査の実施その他の活動に対する理解と協力について、地域における機構等の取組や、関係地方公共団体・関係団体等の検討・対応の状況を踏まえ、段階的に、当該関係地方公共団体・関係団体等に申し入れるものとする」という部分がほぼ新しく加えられました。しかし国、NUMO、電力会社が地方自治体や関係団体を訪問して行う「相互理解促進活動」の中身は何か、「関係住民の声」の「関係住民」とはどのような人々か、「段階的」に申し入れるとは、実際どういうことかと私たちは考えます。
 情報公開などの透明性が担保され、さらに第3者機関の主催により、推進するもの、反対意見を述べるもの、よく分からないとするものなどの多様な意見が自由に交わされる場が保証され、市町村住民・県民や道民などの十分な納得が得られなければ撤退することが可能であるなど、住民の意思を尊重する進め方が行われるのでなければ、核ゴミの最終処分地選定にあたって、これまでの公正さに欠ける手法を、今度は国が、政府一丸となって行っていくための「改定」ではないかと考えざるをえません。

 今回の改定案は、現在まで核関連施設を建設するにあたって水面下で行われてきた市町村の首長と一部住民の取り込み、県や道などの首長への圧力、交付金などお金による誘導など、不透明で不公正な手法を、国の方針として行うことを明言したものであると私たちは考えます。
 このような不透明で非民主的な手法を国が前面に立って進めることは、今まで以上に地域を分断し、人間関係を引き裂きます。古くからの友人と心おきなく会話をすることもできなくなり、家族や親せきの間にも軋轢を生じさせます。
 また、核施設の受け入れの見返りに多額のお金を受け取らせる手法は、財政の健全性を損ないますが、さらに今回の改正案で述べられているように「国が『関係府省庁連絡会議』および『地方支分局連絡会議』を設置して地方公共団体の関心や意向を的確に受け止め、関係省庁の連携の下、それに応えていくこととし、当該地域の将来の持続的発展に向けて取り組む」というような丸抱えの発想は、確実に地方自治をむしばみ、地域の活力を奪います。
 私たちは、上記の理由から「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案」に抗議し、撤回を求めます。

 

以上