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2023/5/11「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案」の閣議決定への抗議文を提出

 政府は2023年4月28日、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案を閣議決定しました。2023年5月11日、この改定案が地域社会を分断し、地方自治を毀損することから、改定案の閣議決定に抗議し、撤回を求める文書を提出しました。


地域社会を分断し、地方自治を毀損する「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案」の閣議決定に抗議し、撤回を求めます。

 

 

2023年5月11日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様

泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
代表 市川守弘

 

 政府は4月28日、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案を閣議決定しました。私たちは、この改定案が地域社会を分断し、地方自治を毀損することから、改定案の閣議決定に抗議し、撤回を求めます。


 本来、特定放射性廃棄物(核ゴミ)の最終処分場建設に向けた調査は、民主的な公論形成、開かれた透明性の高い政策プロセスにより、当該市町村の住民や県・道などの広域自治体の住民が、その必要性や安全性について充分納得した上で受け入れるべきです。しかし、北海道の寿都町・神恵内村が文献調査を受け入れるにあたっては、そのような進め方はなされませんでした。
 寿都町では町長が住民には知らせることなく隠密裏にことを進め、神恵内村では10年以上前から原子力環境整備機構(NUMO)を含めた秘密の勉強会を開いてきた商工会が議会に請願をあげるという形で電撃的に受け入れが決まりました。2020年の8月から9月に調査受入れの話が明るみに出たとき、ほとんどの住民にとっては「寝耳に水」であり、しかも住民に検討の時間を与えず、わずか1・2か月後の10月には調査受入れが決定され、その1か月後の11月には原子力環境整備機構(NUMO)による調査が開始されてしまいました。その過程において、寿都町民の意思も、神恵内村民の意思も、確認されることはありませんでした。北海道民はおろか、北海道知事の意思も問われることはありませんでした。
 このように一人の首長、あるいは一部の地方自治体議員、あるいは「商工会」のような団体によって強引かつ性急に調査受け入れが決められ、その他の多くの住民は自分たちの住む町・村の将来にかかわる決定から除外されるということが行われれば、当然に地域は分断されてしまいます。人口が数千人、数百人という規模の町村における分断は、大きな痛みをもたらします。自由に物が言えなくなり、幼いころから一緒に過ごしてきた者同士、場合によっては親戚・家族が、昨日までのように一緒に冗談を言い合ったり、助け合ったりすることが難しくなるのです。
 今回閣議決定された基本方針の改定案には「国は、機構及び発電用原子炉設置者等と連携して、全国の地方公共団体や関係団体等を個別に訪問」する、「国は、概要調査地区等の選定の…理解と協力について、…段階的に、当該関係地方公共団体・関係団体等に申し入れる」とあります。首長や一部の住民とコンタクトをとって応募させようというやり方を全国的にやっていく…今回寿都町・神恵内村で起きたこと、つまり住民の分断を全国規模で起こしていくというこの方針を私たちは容認することはできません。
 また、基本方針には、「国が『関係府省庁連絡会議』および『地方支分局連絡会議』を設置して地方公共団体の関心や意向を的確に受け止め、関係省庁の連携の下、それに応えていくこととし、当該地域の将来の持続的発展に向けて取り組む」とあります。このような地方自治体丸抱えの発想は、確実に地方自治をむしばみ、地域の活力を奪います。そもそも地域の将来は住民が主体となって作り上げていくものであるはずです。その基本に立ったうえで、どこの地方自治体の住民にしろ、安心し希望をもって生活を続けることができない状態にあったとすれば、その原因を取り除くための方策をとっていくのが「国の責務」であるはずです。「核ゴミ最終処分場」受け入れと引き換えに「当該地域の将来の持続的発展に向けて取り組む」というような地方自治軽視、住民の主体性軽視の政策を「基本方針」に書き込むべきではありません。

 

 今回の改定案は、現在まで核関連施設を建設するにあたって水面下で行われてきた市町村の首長と一部住民の取り込み、県や道などの首長への圧力、交付金を出したり特別な施策を匂わすことによる誘導など、不透明で不公正な手法を、国の方針として行うことを明言したものであると私たちは考えます。このような不透明で非民主的な手法を国が前面に立って進めることは、今まで以上に地域を分断し、人間関係を引き裂きます。

 

 私たちは、上記の理由から政府が「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案」を閣議決定したことに抗議し、撤回を求めます。

 

以上