寿都町・神恵内村文献調査報告書の説明会の日程が2024年11月22日に発表されました。お近くで開かれる報告書の説明会に参加して、道民の疑問と不安を思いきりぶつけましょう。そしてこの「ここがおかしい」が多すぎる、核ゴミの最終処分場選定にむけた調査をきっぱりやめさせましょう。
えっ?「報告書が難しく書かれすぎていて、質問するのが不安」ですって? もしかするとこの「質問集」のなかに、あなたのモヤモヤにぴったりくる「質問」がみつかるかもしれません。
質問集の使いかた
- ご自由にアレンジしてください。
- 同じ見出しの下に二つ以上の質問があるものがあります。
- 説明会の主催はNUMO(原子力発電環境整備機構)ですが、同席が予想される経済産業省に向けての質問も含めました。
- 末尾に文献調査報告書のどこに該当するかを示しました。発言の際にご活用ください。
質問集
1.処分事業の進め方について
Q1.北海道の「核抜き条例」無視は、道民無視ではないでしょうか
・北海道の「核抜き条例」に違反することを行っているという認識はありますか? この条例に反することを行うのは、道民の意思を踏みにじるものだと思いますがどうですか?
・北海道には2000年制定の「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」(核抜き条例)があり、現知事は道条例を遵守し「概要調査に移行する場合は反対の意見を述べる」と表明しています。国とNUMOは調査期間中に特定放射性廃棄物は持ち込まないから道条例に反しない(*1)、道条例には調査もだめと書いてないから道条例に反しない(*2)という趣旨の説明をしていますが、文献調査は核のゴミを持ち込む最終処分地選定のためのものです。このような論法により道条例を無視することは地方自治を軽視し道民の意思を無視するものだと思いますが、NUMOの考えを教えてください。
*1 2020年9月4日 鈴木道知事が面談した際の梶山経産相発言 *2 神恵内村第4回「対話の場」でのNUMOの回答
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q2.巨額の交付金と引きかえに調査を受け入れさせる手法に問題があるのでは?
・文献調査で20億円、概要調査で70億円という巨額の交付金で 財政困難な自治体に受け入れさせるような手法はそもそも公正とは言えないのではないでしょうか。
・報告書の審議を行った特定放射性廃棄物小委員会でも「多額の交付金をもらって次に進まないわけにはいかないと考えるのはごく普通の感覚」「お金の出所とか金額の多さが重要な議論を妨げている」などの意見が複数出されました。 また寿都町長も交付金のために調査を受入れたと語りました(*1)。十分な合意形成による調査受け入れではなく、お金のための受け入れを誘導するような進め方は改めるべきではないでしょうか。
*1 2020年11月28日放映のTBS『報道特集』で、片岡町長が「一番先に手を挙げて90億円をゲットすれば、これで私の寿都町での使命は終わりで、最後に行くつもりはありません」と発言。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「最終処分法」に問題がある)
Q3.住民の意思に関係なく文献調査を受け入れられるのは問題では?
・一人の市町村長の判断で文献調査を受け入れられる制度そのものが住民無視ではないでしょうか。
・住民合意に必要な十分な時間をかけず、拙速に調査受入れを行わせる、今の処分事業の進め方はおかしいのではないでしょうか。
・放射性物質による災害は未曾有の被害をもたらす危険があり、住民合意には十分な議論と説明、民主的な手続きが不可欠です。しかし寿都町では2020年に国とNUMOの後押しをうけ、町議会での議決を経ずに町長ひとりの判断で調査受入れがされました。町内では調査応募反対の町民の会がつくられ、反対署名が提出され、調査の是非を問う住民投票条例の請求が行われましたが、町長は「肌感覚」で賛成多数だとして応募決定を強行しました。神恵内村においても、村民への説明なしに、村議会で反対の声があるにもかかわらず一カ月足らずで村長が受け入れを表明し、十分に議論することなく議決が行われました。いずれの町村においても民主的な合意の上でなされた決定とは言えません。国とNUMOのやり方からは、住民合意に必要な十分な議論と説明、民主的な手続きが抜け落ちており、改めるべきではありませんか。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「最終処分法」に問題がある)
Q4.処分地選定には「進め」と「一時停止」の信号しかない?
・概要調査に知事が反対すれば、処分地選定は白紙に戻るということですか。それとも一時停止するだけで状況変化を待ち、いつかは概要調査に進もうということですか。
・報告書の 「はじめに」に「概要調査地区の所在地の決定に当たっては,・・・経済産業大臣は,北海道知事または寿都町長(神恵内村長)から概要調査地区の選定につき反対の意見が示された状況においては,・・・概要調査地区の選定は行わないこととしている」とありますが、概要調査地区の選定は行わないというのは「選定プロセスから外れて白紙に戻る」ということですか? それとも「首長が変わるなど状況が変化するまで一時停止する」ということですか? 明確にお答えください。
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q5.そもそも地層処分についての国民的合意がなされていない
・日本学術会議は、2012年9月、原子力委員会への回答のなかで、現時点での科学的知見の限界があるとして、核のゴミの地層処分を前提とした従来の政策の抜本的見直しを求め、暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築を提案しました。また2023年10月には300人以上の地学専門家が声明「世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない -現在の地層処分計画を中止し、開かれた検討機関の設置を-」を発表しました。このように放射性廃棄物の最終処分問題については科学者の間でも意見の一致をみておらず、社会的国民的合意が成立していません。そのような状態で調査を進めるのではなく、一度立ちどまって、本当に今の時点で地層処分を進めていいのかを検討するべきではないでしょうか。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとする「最終処分法」に問題がある)
Q6.安全確保のための規制基準がない
・最終処分法で「別に法律で定める」(*1)とした処分場の安全規制に関する法律は現在まだ作られていません。原子力規制庁は規制基準の策定に向けて、初めて来年度予算案に研究費3億円余りを予算要求し、放射性物質を閉じ込める容器を長期間使用した際の安全性や、最終処分による被ばく線量の評価などの研究を行うということです。容器の安全性や被ばく線量が分かっておらず、安全規制に関する法律のないまま、安全に核のごみを処分するための処分地選定ができると考える根拠を教えてください。
*1:最終処分法第二十条 機構が…業務を行う場合についての安全の確保のための規制については、別に法律で定めるところによる。
(報告書該当箇所::4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとする「最終処分法」に問題がある)
Q7.最悪事故のシナリオについて
・2015年に札幌で開かれた経産省資源エネルギー庁とNUMO主催の地層処分をめぐるシンポジウムでNUMOの近藤駿介理事長(当時)が「(核ごみ処分場での)最悪事故のシナリオを作ったことはない」という趣旨の発言をしています(*1)。 最悪の事態を想定することで、そのような事態を招かないために解決すべき課題を見つけることができると思うのですが、現在も、核ごみ処分場における最悪事故のシナリオは作られていないのでしょうか。作られているとすればどういう内容のものでしょうか。
*1 ブログ「どうする‘‘核のゴミ‘‘~北海道・幌延から」http://fc2node0314blog.blog.fc2.com/blog-entry-41.html
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「最終処分法」に問題がある)NUMOは2018年の「包括的技術報告」で「稀頻度事象シナリオ」を提示し「著しい放射線学的影響がないことを示すためのシナリオ」としているが「影響がない」ことを前提とするシナリオは「最悪事故のシナリオ」とは言えない。
Q8.最終処分基本方針にある「可逆性」「回収可能性」はどうなっている?
・「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(2023年4月)には 「今後の技術その他の変化の可能性に柔軟かつ適切に対応する観点から、基本的に最終処分に関する政策や最終処分事業の可逆性を担保することとし、…機構は、・・・最終処分施設の閉鎖までの間の廃棄物の搬出の可能性(回収可能性)を確保するものとする」とあります。しかしこの基本方針の中では『可逆性』のための具体的な制度設計はなされておらず、事業を取りやめることについての条件や基準は定められていません。これでは事業の途中で問題が生じても、中止されずに進められる可能性があるのではないかと不安です。また搬入中の災害や地下水の流入などの発覚があった場合、搬入された高レベル廃棄物をどこに移すか、といった問題も生じることが想定されます。基本方針において求められている可逆性・回収可能性をどのように実現するのかをお答えください。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。「最終処分法」で基本方針を定めることされている)
Q9.処分後の見守り期間について
・最終処分には10万年の保管が必要と言われていますが、埋設が終わった後にNUMOはいつまで、どのように見守る計画ですか。見守りの結果、問題が発生した場合、どのように対処する計画ですか。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「最終処分法」第五十六条にNUMOの業務が定められている)
Q10.文献調査報告書の審査は第三者的組織によって行われるべきでは?
・NUMOは最終処分の実施主体です。また経産省は最終処分を進める官庁です。そして文献調査報告書の審議を行った特定放射性廃棄物小委員会と地層処分技術ワーキンググループは経産省の審議会です。このような組織に中立的な判断ができるのでしょうか。 文献調査報告書の審査は第三者的組織によって行われなければ国民からの信頼が得られないと思いますが、どう考えますか。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ 調査のよりどころとされる「最終処分法」に問題がある)
Q11.説明会では、道民・国民が慎重派の専門家の意見も聞けるようにするべきでは?
・この説明会の目的は、説明をすることにより道民・国民の理解を得ることだと思います。しかし、道民・国民の側からしてみれば、NUMOと経産省だけの見解を聞いても、本当にそうなのかという思いが残ります。また、昨年の300人以上の地学専門家による声明などにより、報告書の内容に疑問を持つ専門家が少なからずいることが分かります。道民・国民の理解を得るというのであれば、この説明会にも慎重派の専門家を複数招き、疑問に思ったことについてNUMOだけでなく違った見解をもつ専門家にも聞けるようにすることが必要ではないでしょうか。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「文献調査計画書」には「技術的、学術的な問題や安全性等について、科学的な根拠を明確にし、地域住民に対し正しい情報を提供するとともに、事業推進の賛否に片寄らない中庸な対話活動の徹底を図ること」とある)
2.地域住民・周辺自治体に関して
Q12.「対話の場」について ―― 対話の場は課題山積
・文献調査報告書「はじめに」には、寿都町と神恵内村で開かれた「対話の場」について“多様な対話が重ねられており”と書かれていますが、「多様な対話」という表現は間違いではないでしょうか?
特定放射性廃棄物小委員会で議論された「対話の場」振り返りでは「課題を残した」とNUMO自身が振り返り、第三者専門家(*1)からも厳しい指摘が多く寄せられています。何より参加者から「本音が言いづらかった」(寿都町)「対話の場で地域の将来の議論をするのは賛成できない」(神恵内村)などの意見が寄せられていて
「対話の場」の運営は課題山積であったといえます(*2)。「対話の場」で活発な議論がされているかのような「多様な対話が重ねられており」という表現を、改めるべきではないでしょうか。
*1 「対話の場」の振り返りを行うに際し特定放射性廃棄物小委員会の事務局(国・NUMO)が第三者専門家に助言等を依頼した。*2 第4回特定放射性廃棄物小委員会資料8「対話活動の振り返り=資料編=(案)」
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q13.「対話の場」について ―― 寿都町「対話の場」の会員構成に偏りがある
・寿都町「対話の場」の会員構成には偏りがありました。
寿都町「対話の場」の会員選定は町が行い、一般募集はありませんでした。20人程度の会員枠は町議と産業団体の長にあてがわれ、文献調査に伴う交付金の分配に関する利害関係者だけを集めた感もあります。また、会員のうち女性は一人だけで、のこりはすべて中年以上の男性であり、若者の参加もありませんでした。それにも関わらず「多様な対話」という表現をするのは、改めるべきではないですか。
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q14.「対話の場」について ―― 寿都町「対話の場」の事務局は推進する町とNUMO
・寿都町「対話の場」の事務局は町とNUMOであり、会員以外の立ち合いは経済産業省の職員とNUMO、そして町とNUMOから委託されたファシリテーターのみに限定されていました。調査を推進する立場の3者による閉鎖的な空間です。運営に慎重派が入らなければ、中立公正は担保されないのではないでしょうか。こうした運営にも関わらず、「多様な対話」ができたとお考えですか。
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q15.「対話の場」について ―― 会員への謝金の支払いはあった?
・寿都町と神恵内村の「対話の場」会則には、謝金の支払いが可能である旨が書かれています。行政主催の有識者会議などでは委員に謝金が支払われることも一般的ですが、今回の「対話の場」のような民主的な運営が求められる集まりでは、謝金の発生によって、会員に主催者の意向を忖度させる恐れがありませんか。「対話の場」の公正さに影響する内容だと考え、質問します。「対話の場」会員への一回あたり一人分の謝金金額と、町、NUMOが負担した総額をそれぞれ教えてください。
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q16.「対話の場」について-寿都町では慎重派の学者が呼ばれなかった
・政府の「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」は、NUMOおよび国は「専門家等からの多様な意見や情報の提供の確保を」するとうたっていますが、寿都町では町民から「慎重派の科学者の意見も聞きたい」という要望が再三あったにもかかわらず実現されませんでした。基本方針を守らず町民の要望に対応しなかった理由をお答えください。
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q17.文献調査の裏側で、住民が被った被害について
・拙速に始められ進められた文献調査の裏側で、住民が被った分断等の被害について責任があると考えますか、あるいは責任はないと考えますか。
・2023年5月に寿都町の住民団体(*1)から経済産業省に提出された公開質問状「高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定における政府の責任の範囲について」では
〇地域内での人間関係の分断等が発生しても、政府は住民に対して精神的苦痛の賠償や謝罪は行わないのか。 〇地域内での人間関係の分断等や、その自治体外からの差別、風評被害が発生した場合、それは当該自治体の首長を含めた各人の自己責任とするということか。
という質問が投げかけられていますが、現時点で経済産業省から明確な回答はないと聞いています。
文献調査を進める裏側で起きるこのような被害への責任について、どうお考えですか。
*1 子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「最終処分法」に問題がある)
Q18.文献調査において交付された交付金の交付要件と交付範囲は?
・電源立地地域対策交付金は、原発や核ごみの処分場が作られ、あるいは作られる予定のある市町村等に交付されると発電用施設周辺地域整備法および同施行令に定められています。文献調査において2年間にわたり20億円が電源立地地域対策交付金として交付されていますが、この交付金の交付要件と交付範囲を教えてください。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとして挙げられている「最終処分法」で定めることとされている「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(2023年閣議決定)第7に「国は、文献調査段階から、電源三法に基づく交付金を交付する」とある。この基本方針に問題がある)
Q19.知事が概要調査に進むことに反対することが分かっていながら20億円の交付金を支払ったのは法律違反では?
・文献調査において2年間にわたり20億円が電源立地地域対策交付金として交付されていますが、この交付金の根拠となる発電用施設周辺地域整備法の「(地点の指定)第三条」によれば、発電用施設(注:核ごみ処分場も含まれる)の設置が予定されている「その地点における発電用施設の設置に関する計画が確実であると認められること」が条件とされています。伺いますが、寿都町・神恵内村における核ゴミ処分場の建設は「設置に関する計画が確実」なのでしょうか。国は知事と市町村長の反対があれば次の段階に進めないとしています。そして、現知事は道条例を根拠に概要調査に進むことに反対すると明言しています。にもかかわらず文献調査を受け入れた二自治体に、最大20億円を交付したのは法律に違反しているのではないでしょうか。
(報告書該当箇所:前項に同じ)
Q20.周辺町村に20億円の交付金を配分しようとした=関係町村と認めている
・処分場に関する電源立地地域対策交付金についてです。2021年8月4日、寿都町長の呼びかけにより隣接する島牧村、黒松内町、蘭越町、隣隣接の岩内町の4町村の出席のもと、片岡町長が調査に応募した趣旨説明をし、同席した経済産業省の担当者より交付金の配分に関する説明があったとのことです。これに対し隣隣接の岩内町のみが交付を受ける意思をしめしました。交付金の呼びかけをしたということは、国がこれらの町村を関係町村であると認識していると考えていいでしょうか。そうであれば当該町村全てで文献調査の報告説明会を開催すべきではないでしょうか。さらにいえば、隣接する関係町村である島牧村、黒松内町、蘭越町において核抜き条例が制定され、交付金を受け取らなかった事実を重く受け止め、文献調査を中止するべきではなかったでしょうか。
(報告書該当箇所:前前項に同じ)
3.おもに技術的視点から
Q21.報告書は科学的特性マップそのまんまどころか対象地区を拡げている
・報告書を見ると、概要調査候補として示された場所は、神恵内村については、2017年に公表され日本の国土の65%を「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域とした「科学的特性マップ」そのまま、寿都町に至っては「科学的特性マップ」で「好ましくない」とされる場所まで候補とされ、しぼりこむどころか寿都町全域へと候補地区を広げてしまっています。最終処分法(*1)にも示されている概要調査地区のしぼりこみを行わなかった理由を教えてください。
*1「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(2000年)。第二条、第六条
(報告書該当箇所:寿都町・神恵内村ともに5.2「概要調査地区の候補」)
Q22.適切でない可能性が想定される箇所は文献調査段階で除外すべきでは?
・しぼりこみの役割を果たしていない文献調査の報告書案について、経産省の審議会でも「適切ではない可能性が想定される箇所においては、概要調査に先送りするよりも、文献調査段階で切り捨てて、概要調査に臨むことが望ましい」という内容の意見が複数の委員から出されました(*1)。しかし報告書では、処分場に適さないことを示す根拠となる事項をことごとく「留意すべき事項」として扱い、概要調査で判断するとして先送りしています。最終処分場の設置場所として適切でない場所を本気で回避しようとするのであれば、このように適さない可能性が想定される場所は、文献調査段階で除外すべきではありませんか?
*1 2024年3月29日第二回、同5月2日第三回ワーキンググループなど。
(報告書該当箇所:寿都町・神恵内村ともに5.2「概要調査地区の候補」)
Q23.「はじめに」に記述された「活断層や火山などの影響については、基本的に概要調査段階で把握し」は削除すべきでは?
・報告書の「はじめに」に「活断層や火山などの影響については、基本的に概要調査段階で把握し」と記述されています。この記述は今年2月に公表された報告書(案)にはなく、新たに書き加えられました。これでは文献調査による活断層や火山などの影響に基づく調査対象範囲の絞り込みができなくなります。一方、最終処分法は文献その他の資料による絞り込みが行われることを規定しています(*1)。概要調査への先送りを後付けで正当化するようなこの一文は削除すべきではないでしょうか。
*1 「最終処分法」第二条、第六条
(報告書該当箇所:寿都町、神恵内村ともにp1「はじめに」)
Q24.磯谷溶岩-岡村聡道教育大名誉教授の調査により第四紀火山であることが明らかになったにもかかわらず磯谷溶岩から半径15キロメートル以内を除外していない
・説明書にある基準では第四紀(約258万年前から現在までの時代)火山とその活動中心から約15㎞以内を不適地とするとしています。しかし寿都町の磯谷溶岩について、岡村氏がサンプルを採取し専門機関で年代測定を実施した結果、第四紀火山であるという測定結果を得ました。この調査結果は11月16日に日本火山学会で発表されましたが報告書にいっさい反映されていません。この調査結果に対しては、文献調査報告書案の審議にあたった地層処分技術ワーキンググループ委員の下司信夫九州大教授が「第四紀火山として扱うべきだ」「報告書の審議終了前の段階で知見が得られていれば、磯谷溶岩は除外対象になったはず」と述べています(*1)。このように新知見により第四紀火山であることが示された磯谷溶岩について、いっさい精査しないまま、報告書の発表を行ったのは、磯谷溶岩を第四紀火山であることを認めた場合、寿都町の大部分が除外対象になるからだとしか考えられませんが、なぜ精査しなかったのか、お答えください。
*1 2024年11月15日付「北海道新聞」)
(報告書該当箇所:神恵内村4.2.2(2)「噴火」、5.1「評価のまとめ」。なお報告書4.1.3(5)「新知見への対応」には「必要に応じて新知見に基づく新たな観点で知見の整理や評価をおこなった」とある。
Q25.地質調査総合センターHPでも第四紀火山とされているニセコ火山群の雷電山(らいでんやま)が第四紀火山の活動中心であることを否定している
・3月29日の地層処分技術ワーキンググループでの審議において、岡村聡参考人は「第四紀火山の活動中心から半径15㎞を避けるべきであるという規定に関しては、ニセコ-雷電火山群のうち、雷電火山を中心とした半径15㎞をさける範囲とすべき」と指摘しています。またニセコ-雷電火山群は、地質調査総合センターHP「日本の火山」でも第四紀火山とされており、「第四紀火山岩体・貫入岩体データベース」においても雷電山が「既知の第四紀火山」とされています。また、2021年に北海道電力が規制庁に提出した資料でも雷電山の活動年代を第四紀である約140-80万年前としています。それを「活動中心を明確に定めることは難しい」として避けるべき対象としなかった根拠を示してください。
(報告書該当箇所:前項に同じ)
Q26.黒松内低地断層帯の線上にある地域が候補から外されていない
・国の地震調査研究推進本部によると「黒松内低地断層帯は、北海道寿都郡寿都町から…長万部(おしゃまんべ)町に至る断層帯です」とあり、長さは約32km以上、黒松内低地断層帯は全体が1つの活動区間として活動する場合、マグニチュード7.3程度以上の地震が発生する可能性があると評価しています。
報告書の審議を行った経産省の審議会委員が、この黒松内低地断層帯について「海域も含めて、その線上は概要調査地区から外すことが望ましい」(*1)と主張しました。しかしNUMOはこれを受け入れませんでした。審議会委員である専門家も外すべきだと言っている黒松内低地断層帯の線上にあたる地域は概要調査地区から外すべきではないでしょうか。
*1 2024年5月2日第三回地層処分技術ワーキンググループにおける長田昌彦埼玉大学大学院理工学研究科教授 (日本応用地質学会推薦)提出の意見書
(報告書該当箇所:寿都町・神恵内村ともに 4.2.2(1)「地震・活断層」、5.1「評価のまとめ」)
Q27.黒松内低地断層帯の一部である白炭断層だけを取り上げて評価
・国の地震調査研究推進本部が黒松内低地断層帯全体の長期評価を行っているのにもかかわらず、報告書では、黒松内低地断層帯の一部である「白炭断層(しろずみだんそう)」だけを取り上げて寿都地域の安全性を評価しています。1月1日の能登半島地震では個別断層が150キロにもわたり連動し大地震を引き起こしました。個別断層が連動して大地震を引き起こす可能性を考えることは、断層帯についての基本的考え方だと思いますが、断層帯から一つの断層をあえて切り離して評価した理由を教えてください。
(報告書該当箇所:前項に同じ)
Q28.変動地形学的調査で活断層であることが示されていても、地質調査や音波探査で確認できていないとして除外していない。だから活断層として概要調査候補から除外された断層が一つもない
・報告書には、活断層を評価するにあたって「変動地形学的調査、地質調査および音波探査などの地球物理学的調査に関して文献・データから抽出した情報を用いて検討した」とありますが、報告書の「地震・活断層に関する説明書」を見ると、変動地形学的調査結果が活断層であることを示している箇所が数多くあるにもかかわらず、地質調査および音波探査などの地球物理学的調査により活断層であることを確認できていない、あるいはこれらの手法による情報がないことを理由として、ことごとく基準に該当しないとしています。あきらかに変動地形学的調査を下位に、地質調査および地球物理学的調査を上位に置いた判断を全般について行っていますが、その理由を教えてください。
(報告書該当箇所:寿都町・神恵内村ともに 4.2.2(1)「地震・活断層」、5.1「評価のまとめ」、「地震・活断層に関する説明書」5.1「活断層」
Q29.積丹半島西方断層―規制委が活断層の可能性を指摘しているにもかかわらず北電のデータをもとに否定
・神恵内の沖合の積丹半島西方断層について、説明書では渡辺・鈴木(2015)らの変動地形学的調査により示された延長を約73kmとする海底活断層に対して、北海道電力(2015)の音波探査によるデータをもとに基準に該当しないとしています。しかし北海道電力は2017年に泊原発の審査会合において、原子力規制委員会からこの沿岸域の地震性隆起による断層の可能性を指摘され、活断層を仮定した地震動評価を行っています。にもかかわらず北海道電力(2015)を根拠にした理由を教えてください。
(報告書該当箇所:神恵内村4.2.2(1)「地震・活断層」、5.1「評価のまとめ」、「地震・活断層に関する説明書」5.1「活断層」)
Q30.海底活断層―活断層であっても15キロ以内の大陸棚にないとしてスルー
・報告書では、寿都町の沖にある「北海道電力(2013a,2015a)らの海底活断層」、神恵内村の沖にある「神威海脚西側の断層」を避けるべき基準に「該当する可能性が高い」としながら、海岸からおよそ15キロの大陸棚の地下に分布しないとして検討の対象から除外しています。しかし海底活断層の恐ろしさは海底が大きく動くことによる津波の発生にあり、海岸に作られる処分場にとっては大きな脅威となります。2011年の東日本大震災を経験しながら沖合にある海底活断層を考慮していないのはなぜですか。
(報告書該当箇所:前項に同じ)
Q31.第四紀の未固結堆積物があっても300メートル以深の情報がないから避ける基準に該当しない?
・未固結堆積物(固まっていない堆積物)を含む地層は処分場に適さないので避けることになっていますが、報告書にあるとおり、寿都・神恵内地域には未固結堆積物を含む地層が広く分布しています。しかしたとえば神恵内の説明書では海域の一部地層について第四紀未固結堆積物が300メートル程度の位置に認められるとしながら、300メートル以深について記録・情報がないとして避けるべき基準に該当する場所がないとしています。処分場の建設可能性を考えても、第四紀未固結堆積物のある場所は文献調査段階で候補地から除外すべきではありませんか。
(報告書該当箇所:神恵内村4.2.2(4)「第四紀の未固結堆積物」、5.1「評価のまとめ」)
Q32.寿都神恵内地域の岩盤はもろくて不均質
・寿都・神恵内地域には、海底火山が噴火し、マグマが海水で急激に冷やされてできた水冷破砕岩(すいれいはさいがん、ハイアロクラスタイト)を多く含む岩質が広がっていることが報告書に記されています。この水冷破砕岩は「岩相変化が著しく、高い不均質性を有することが想定される」と報告書にもあり、また著しく強度が低いこと、海底火山が噴火した時マグマの通り道となった岩脈は割れ目が多く、水の通り道となりえることを岡村聡道教育大名誉教授が指摘しています。報告書は「『好ましい地質環境特性』から外れる傾向が推察される」としながら、地下深部の情報が少ないとして概要調査での「留意すべき事項」とし、判断を先送りしています。しかし神恵内村の古宇川河口付近の温泉ボーリングにより1000メートル以深にも水冷破砕岩が広がっていることが分かっています(*1)このような水冷破砕岩が広がる地域は概要調査候補とすべきではないと考えますがいかがですか。
*1 2023年11月に神恵内村で行われた「高レベル放射性廃棄物の文献調査に関するシンポジウム」における岡村聡道教育大学名誉教授の講演による
(報告書該当箇所:寿都町・神恵内村ともに 4.2.3(2)「技術的観点からの検討」5.1「評価のまとめ」)
Q33.寿都町の低周波地震が大地震を引き起こす可能性を考えるべきでは?
・報告書は寿都町の深さ30㎞付近で発生している低周波地震について、部分溶融域やそこから上昇する流体の存在を示唆している可能性があると指摘されていると述べていますが、これを新しい火山が生じる可能性とだけ関連づけてとらえています。しかし、今年の正月に起きた能登半島地震は、マントルから上昇した流体が引き起こした群発地震が、およそ150キロの活断層帯に連動して起きたと考えられています。能登半島地震による最新の知見を反映し、寿都町の低周波地震が黒松内低地断層帯に連動して大地震を起こす可能性を考慮するべきではありませんか。
(報告書該当箇所:寿都町・神恵内村ともに 4.2.2(2)「噴火」5.1「評価のまとめ」)
Q34.なぜ判断が恣意的になるのか―経産省の「評価の考え方」が問題
・報告書を見ると文献・データの評価にあたって「基準に該当することが明らかまたは可能性が高いとは言えない」という文言が多用されています。実は文献調査の根拠となっている「最終処分法」は、「地震等の自然現象による地層の著しい変動の記録がないこと」「将来にわたって、地震等の自然現象による地層の著しい変動が生ずるおそれが少ないことが見込まれる」地区から概要調査地区を選定しなければならないとしています。つまり懸念事項が「ない」「少ない」ことが明らかでなければ概要調査に進めないはずでした。しかし文献調査がほぼ終了した2023年11月、経産省は後出しじゃんけんのように「文献調査段階の評価の考え方」を発表し、最終処分法を読み替えて、地層の著しい変動等の記録があること、おそれが多いことが「明らか」又は「可能性が高い」ものを避ける」としてしまいました。そして「おそれが多い」「可能性が高い」とする判断基準は明確にしませんでした。その結果、全くしぼりこみの行われない文献調査報告書ができあがったわけです。この「評価の考え方」は審議会の了承を得たといいますが、法律の解釈をこのように都合のいいように変えてしまっていいものでしょうか。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「文献調査段階の評価の考え方」に問題がある)
Q35.掘削土はどうするの? ヒ素や亜鉛、鉛がでることを住民に説明しているの?
・処分場建設にあたって掘り出す掘削土はどのくらいの量になるのでしょうか。寿都・神恵内地域を深く掘れば、ヒ素、亜鉛、鉛などを含んだ有毒な掘削土の山ができます。処分場を閉鎖するときは、その掘削土を使用することになっているので、何十年もの間その掘削土は寿都町・神恵内村におかれることになります。掘削土から出る汚染された水は、川を汚し、海を汚す可能性があります。神恵内村に至っては掘削土を置く場所があるとも思えません。そのことを住民に説明したのでしょうか。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「最終処分法」に問題がある)
Q36.津波予想-神恵内村20.3メートル、寿都町16.5メートル。閉鎖前に津波が来たら最終処分場はどうなる? そのリスクを住民に説明しているの?
・2014年発表の日本海沿岸の津波推計によると、神恵内村の海岸線での最大津波高は20.3メートル、寿都町の海岸線の最大津波高は16.5メートルです。処分場の閉鎖前に津波がきて海水が侵入した場合、どのようなことが起こり得るのか、また海底下に処分場をつくり閉鎖前に津波に襲われた場合、どのような事態がおきるのか、ご説明ください。
(報告書該当箇所:4.1.1調査のよりどころ。調査のよりどころとされる「最終処分法」に問題がある)