岡村聡北海道教育大学名誉教授らが寿都町の「磯谷溶岩」の火山活動の中心について、分布範囲南側にある火砕丘付近と特定した論文が日本地質学会に受理されたことを受け、2025年6月13日、原子力発電環境整備機構(NUMO)に対し、寿都町の文献調査報告書を修正し、磯谷溶岩の活動中心から半径15㎞以内を概要調査候補地区から除外することを求める要請書を提出しました。
2025年6月25日付のNUMOからの回答を受け、7月5日付でNUMOに対し再要請文を提出し、7月17日付でNUMOから回答がありました。
7月17日付のNUMOからの回答を受け、2025年7月28日付で、学術論文を軽んじるNUMOの不誠実な回答に抗議し、質問に対し個別具体的に回答することを求める文書を提出しました。
また、同日付で経済産業省に対し、NUMOへの指導を求め、また今回のような重大事項に関する議論の進め方についての質問状を送付しました。
2025年7月28日午後、今回の抗議文と質問状の送付についての記者会見を行いました。
2025年8月26日にNUMOから、9月3日に経済産業省から回答がありました。
参考記事
・2025/7/5 NUMOに対し寿都町の磯谷溶岩の活動中心から半径15km以内を概要調査候補地区から除外することを求める再要請文を提出 7/17に回答あり
原子力発電環境整備機構(NUMO)への再要請文
2025年7月28日
原子力発電環境整備機構
理事長 山口 彰 様
泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
代表 市川守弘
岡村聡北海道教育大学名誉教授らによる論文「西南北海道,当丸山溶岩と磯谷溶岩のK-Ar年代と岩石記載:寿都町と神恵内村周辺における第四紀火山の認定について」に関する当連絡会からの要請文に対する貴機構の不誠実な回答に抗議し、質問に対し個別具体的に回答することを求めます
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」(2008年3月閣議決定)では、「第5…機構は、最終処分の実施については最新の知見を十分反映して行うものとする」と定められています。最新の知見を反映するには、まず基本として、新しい科学的知見に対する敬意が必要ですが、今回の貴機構からの回答には査読付きの学術論文をあえて「報告」と呼ぶなど、その態度には「西南北海道,当丸山溶岩と磯谷溶岩のK-Ar年代と岩石記載:寿都町と神恵内村周辺における第四紀火山の認定について」(地質学雑誌,第131巻,第1号,213-222ページ、2025年)に対する敬意が微塵も感じられません。
また貴機構は、磯谷溶岩が処分地として避けるべき第四紀火山であることを確認するためには、第四紀を示す年代データの拡充、火山の活動中心の評価、近傍の火山「ニセコ・雷電火山群」との相違の三点が必要であるとしてきましたが、岡村氏らの当該論文にはこの三点がしっかりと述べられています。そのことを認めず、あくまで「概要調査に進んだ場合、さらなる調査・検討を行う」とする貴機構の「見解」を読むと、岡村氏らの新知見を真摯に理解する態度に欠けていると考えざるを得ません。
私たちは、貴機構の今回の7月17日付回答に抗議するとともに、以下4点について、個別具体的に回答されることを求めます。
記
- 磯谷溶岩に関する岡村氏らによる新知見に対し、経産省の審議会である特定放射性廃棄物小委員会および地層処分技術WGすら通さず、NUMO内部の判断だけで報告書に反映しないことを決定できると考えているのでしょうか。決定できる、できない、で回答してください。
- 決定できると回答された場合、これら審議会の役割は何であると考えているのか、具体的に回答してください。
- 決定できないと回答された場合、経産省に対し審議会の開催を求める考えがありますか。ある、ない、で回答してください。
- 岡村氏らによる論文には磯谷溶岩の火口のおよその位置が示されており、暫定的に火口中心を定め半径15㎞を示すことは可能なはずです。実際にそのようなやり方で半径15㎞を除外している積丹岳のケースとの違いは、どのような判断基準に則ったものなのか、具体的に述べてください。
以上
ご多忙とは存じますが、同封の封筒により私たちの質問に対する回答を8月7日までにいただけますようお願いいたします。なお、この質問状と貴機構からのご回答は一般にも公開いたします。
経済産業省への質問状
2025年7月28日
経済産業大臣 武藤容治様
泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
代表 市川守弘
質問状
このたび原子力発電環境整備機構に対し、同封の質問状「岡村聡北海道教育大学名誉教授らによる論文『西南北海道,当丸山溶岩と磯谷溶岩のK-Ar年代と岩石記載:寿都町と神恵内村周辺における第四紀火山の認定について』に関する当連絡会からの要請文に対する貴機構の不誠実な回答に抗議し、質問に対し個別具体的に回答することを求めます」を送付いたしました。NUMOはHPで述べている「見解」の中で査読付きの学術論文をあえて「報告」と呼び、論文に述べられた考察をことごとく否定するなど、その態度には新知見に対する敬意が微塵も感じられません。また神恵内村の文献調査において、積丹岳から半径15㎞を除外していることとの整合性についての説明も行っていません。
さらにNUMOは、貴省の審議会である特定放射性廃棄物小委員会および地層処分技術WGすら通さず、NUMO内部の判断だけで、このような重大事項を決定していいと考えているようです。
私たちは、貴省に、NUMOに対し、このような不遜な態度を改め、今回学会誌に発表された岡村氏らの査読付き論文を改めて精査するよう指導することを求めます。また、私たちは調査の正当性に関わる判断をNUMOだけに行わせることは妥当ではないと考えています。本来は中立的な立場の進行役が取り仕切る場において十分な議論が行われることが望ましいと私たちは考えていますが、貴省の審議会である特定放射性廃棄物小委員会および地層処分技術WGで十分審議することは、国民の信頼を得てゆくうえで、最低限必要なことであると考えます。この点についての貴省のお考えを、その理由も含めてご回答願います。
以上
ご多忙とは存じますが、同封の封筒により、私たちの質問に対する回答を8月7日までにいただけますようお願いいたします。なお、この質問状と貴省からのご回答は一般にも公開いたします。
NUMOからの回答
2025年8月26日
泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
代表 市川守弘 様
原子力発電環境整備機構
理事長 山口 彰
回答書
7月30日に受領しました要請文について、回答します。
項目1〜3につきまして以下のとおり回答します。
最終処分法では、文献調査報告書は実施主体である当機構の責任の下で作成することとされています。その上で、寿都町での文献調査は、地質関係の関連学会から推薦いただいた専門家等で構成された国の審議会での議論を経て、国が策定した「文献調査段階の評価の考え方」に従い、調査・評価を実施しました。今回の岡村氏らによる報告(以下、「当該報告」という。)について、「文献調査段階の評価の考え方」に従い確認した結果、磯谷溶岩について、当該報告を考慮してもなお、「避けるべき基準」に該当するかどうかを引き続き評価できないことから、概要調査地区の候補は変わらず、文献調査結果には影響しないものと考えています。概要調査に進ませていただいた場合、さらなる調査・検討を行いたいと考えています。
なお、審議会につきましては、今後も国により適宜開催されていくものと認識しており、開催された際には当機構としても適切に対応して参ります。
項目4につきまして、「文献調査段階の評価の考え方」では、マグマの貫入と噴出に係る基準の1つとして、「第四紀に活動した火山の活動中心からおおむね15km以内」(基準イ)を避けることとしています。
積丹岳は、文献に基づき明確に第四紀(258万年前以降)である年代測定値(226万年前~180万年前)が得られています。また、日本の火山の基本的なデータベースであり、定期的にレビュー、改訂されている「日本の火山(第3版)」(産業技術総合研究所地質調査総合センター)及びそれに基づいた「第四紀火山」(産業技術総合研究所地質調査総合センターウェブサイト)では、既存文献を精査の上、積丹岳が複成火山(複数回の噴火を繰り返して地下から供給された火山噴出物などにより火山体を形成する火山)であることが認定されていることから、当機構は積丹岳を独立した第四紀火山であると評価し、活動中心を設定しました。その際、山頂を暫定的な活動中心の位置と評価し、半径15km以内を避ける場所としています。
一方で、文献調査報告書を作成する際に参照した限りにおいて、磯谷溶岩を独立した第四紀火山であると認定した文献はありません。その上で、年代に関し、当該報告では「磯谷溶岩のK-Ar年代結果は、2.70土0.60Maの値で年代誤差を考慮すると鮮新世末期~更新世初期の活動年代を示す」、「測定誤差が大きくなっているが,この原因は大気アルゴンの混入率が高くなっていることによる.」とされています。また、磯谷溶岩の分布域の地下に火道・火口が存在しているかどうかに関し、当該報告では「南部に厚く広がる溶結構造を示すスコリア層の存在から,近隣の山頂部付近を火口とするストロンボリ式噴火によって火砕丘が形成された可能性がある.」「磯谷溶岩は,玄武岩質火砕丘とその周辺から流出した安山岩~デイサイト質溶岩流からなる単成火山と推定される.」と、あくまで可能性の提示や推定に留まっており、火道・火口の明確な情報は確認できませんでした。さらに、磯谷溶岩が独立した火山活動か否かに関し、当該報告ではその主要な論拠であるニセコ・雷電火山群と雷電岬火山角礫岩層の近似性について、「結論として,磯谷溶岩は(中略)雷電岬火山角礫岩層との近侍性(原文のまま。「近以」と考えられる。)が最も高いマグマに由来した可能性がある.」、「今後は(中略)詳細な分析を行い比較検討する必要がある.」と、可能性や追加検討余地の提示に留まっています。これらのことから、当機構としては、当該報告を踏まえても、磯谷溶岩が独立した第四紀火山であるかどうか評価できないと考えており、活動中心の設定は行っていません。
概要調査に進ませていただいた場合は、磯谷溶岩に関し、年代、磯谷溶岩の分布域の地下に火道・火口が存在しているかどうか、磯谷溶岩が独立した火山活動であるかどうかについて、さらなる調査・検討を行いたいと考えています。
以 上
経済産業省からの回答
令和7年9月3日
泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会
市川 守弘 様
経済産業省資源エネルギー庁
電カ・ガス事業部放射性廃棄物対策課
令和7年7月28日付の質問状について、以下のとおり回答します。
記
NUMOは、本年7月17日に地質学雑誌第131巻第1号に掲載された「西南北海道,当丸山溶岩と磯谷溶岩のK-Ar年代と岩石記載:寿都町と神恵内村周辺における第四紀火山の認定について」と題する報告に対する見解を、ホームページ上で公表しているものと承知しています。最終処分法では、文献調査報告書は実施主体であるNUMOの責任の下で作成することとされており、国としては、文献調査結果に影響を与え得る情報や新知見があれば真摯に対応を検討するよう、NUMOを指導・監督してまいります。
なお、特定放射性廃棄物小委員会や地層処分技術ワーキンググループについては、必要に応じて開催してまいります。
以上